T-QARD Harbor

               

量子アニーリングで人工素材を設計する “FMQA”

持続可能な社会を実現するためのエネルギー変換や環境浄化、医療などの分野での応用が期待されている「メタマテリアル」の設計図を効率的に探すための手法として「ブラックボックス最適化」技術を用いることが提案されています。ブラックボックス最適化では、すでに性能がわかっている素材の設計図をもとに、より「優れた」設計図を探すための最適化問題を作成し、それを解くことで最適な設計図を探します。本論文では、この最適化問題を量子アニーリングを用いて解く試みを行います。

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close up view of a dna double helix, dna damage, concept of disorder or genetic mutation (3d render)

量子アニーリングはガン細胞の識別に適している?

本論文では量子アニーリングを用いてガンデータの分類を行い、既存アルゴリズムとの比較評価を行います。量子アニーリングは、量子効果を用いてイジング模型の基底状態を探索します。このイジング模型の基底状態を古典的な計算によって探索することが可能なシミュレーテッドアニーリングの性能も評価します。その結果、イジング模型を用いた機械学習アルゴリズムは、学習データが少ない場合に優れた分類性能を持つことがわかりました。

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量子アニーリングによる画像生成の評価モデル

本論文では、ボルツマンマシンの学習内のサンプリングにD-Waveマシンを用いることで、その画像生成の品質向上を目的としています。
分類器としてニューラルネットワークを予め学習しておき、特定の数字の画像を生成したときに、その画像の分類結果を測ることで直接的な評価を行います。

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Big data and artificial intelligence concept. Machine learning and cyber mind domination concept in form of women face outline outline with circuit board and binary data flow on blue background.

ボルツマン機械学習にD-Waveマシンを用いる

ボルツマン機械学習では対数尤度関数を最大化するために、ギブス・ボルツマン分布からのサンプリングによる平均値を計算する必要があります。その方法の一つとして、マルコフ連鎖モンテカルロ法 (MCMC) が使われています。しかし、MCMCは初期状態から平衡状態への緩和に長時間の計算を要する場合があります。また、緩和した後も平均値を精度良く求めるための十分なサンプリング数の確保に時間がかかるといった課題もあります[1]。そこで本論文では、D-Waveマシンから得られる出力の分布がギブス・ボルツマン分布に近いことを利用して、平均値の計算にD-Waveマシンを用います。本手法により、手書き数字画像の生成・復元が可能であることに加え、ランダムなイジング模型も学習可能であることを示します。

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