T-QARD Harbor

先行研究

制約付き量子アニーリング:罰金項を使わずにグラフ彩色問題を解く

量子アニーリングでは、組合せ最適化問題の制約は罰金項として表現することが一般的です。しかしこの手法は量子アニーリング (QA) の性能を落としてしまうことが知られています。本論文では 制約付き量子アニーリング (Constrained Quantum Annealing, CQA) と呼ばれる手法を用いて組合せ最適化問題を解きます。この手法は制約を罰金項として表現するのではなく、量子効果を表す driver Hamiltonian を適切に用いることで制約を満たした解のみに限定して探索を行うことができる手法です。本論文では組合せ最適化問題の一例としてグラフ彩色問題に注目して、グラフ彩色問題を CQA を用いて解きます。実験の結果では CQA により最適解に近い解を得ることができました。一方で予想と違う結果も得られ、この考察も行います。

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無限幅ニューラルネットワークの統計力学 ― 活性化関数の観点から

ニューラルネットワーク(NN)の性能と活性化関数の関係にまつわる2つの研究の流れがあります.1つは,記憶容量の問題の統計力学的解析です.記憶容量とは,二値分類モデルが記憶できるランダムなデータの最大数(パラメータあたり)で,モデルの表現能力の指標の一つです.もう1つは,無限幅NNとGauss過程の関連に関するものです.この研究の流れは,NNの高い性能に対してより深い洞察を与える理論として注目されています.これらの研究は独立に発展してきましたが,両者には深いつながりがあることを指摘します.

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量子アニーリングで人工素材を設計する “FMQA”

持続可能な社会を実現するためのエネルギー変換や環境浄化、医療などの分野での応用が期待されている「メタマテリアル」の設計図を効率的に探すための手法として「ブラックボックス最適化」技術を用いることが提案されています。ブラックボックス最適化では、すでに性能がわかっている素材の設計図をもとに、より「優れた」設計図を探すための最適化問題を作成し、それを解くことで最適な設計図を探します。本論文では、この最適化問題を量子アニーリングを用いて解く試みを行います。

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D-Waveマシンを利用した材料探索

マテリアルズ・インフォマティクスにおいて、所望の物性値を持つ材料の組合せを高速に探索することが求められています。しかし、材料の組合せ数は膨大であり、物性値の計算(評価)にも時間的・金銭的コストが掛かることが一般的です。ブラックボックス最適化では、出来るだけ少ない評価数で所望の組合せを得ることを目指します。一方で、物性値が高いほど良い訳でもなく、合成のしやすさも重要な指標になっています。そこで本研究では、モデルのパラメータをサンプリングする際に分散を調整することで、多様な材料の組合せを得る手法を提案しています。それにより、物性値の高い様々な組合せを得られることが示されました。

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パーセプトロンのジャミング転移

統計力学と組合せ最適化の関連は長らく指摘されています.特に,充足可能性問題 (SAT) やグラフ彩色問題などの,離散変数の 制約充足問題 (Constraint Satisfaction Problem, 以下 CSP) に対しては,統計物理学の観点からの研究が進んでいます.一方で,連続変数 CSP に対する統計力学的な研究はあまりなされていません.本論文では,ガラスのモデルとして統計物理学で研究されている「球のパッキング」問題が,連続変数 CSP として捉えられることに着目します.球のパッキングは「ジャミング転移」と呼ばれる相転移現象を示すことが知られています.本論文では,連続変数 CSP の単純な例であるパーセプトロンの挙動を統計力学の手法を用いて解析し,球のパッキングと同様のジャミング転移が起こることを示します.

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D-Waveマシンの3世代間比較

2023年5月31日をもって、約5年間利用されてきたD-Wave 2000Qが廃止となりました。現在はD-Wave Advantage、そして2023-2024年に発売予定のD-Wave Advantage2のプロトタイプが利用可能です。本論文では、最大クリーク問題、最大カット問題を解くことにより、これら3世代のマシンの性能比較を行っています。その結果、最新のAdvantage2が、最適解に近い解を得られる確率において最も優れていることが分かりました。これはハードウェアグラフが密になり、マイナー埋め込みに必要なチェーンが少なくなったことが一因と考えられます。また、Advantage2では、比較的フェアサンプリングしていないことも分かりました。

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NISQデバイスにおけるフェアサンプリング性

量子交互演算子アンザッツ(Quantum Alternating Operator Ansatz:QAOA)は最適化問題に対して有効で、Grover Mixier QAOAと呼ばれる手法は理論的に、全ての要素を等確率でサンプリングすること(フェアサンプリング)が可能です。しかし、実際のデバイスはノイズあり中規模量子(Noisy Intermediate Scale Quantum:NISQ)デバイスと呼ばれ、ノイズが存在しており、完全なフェアサンプリングは難しいです。本論文ではNISQデバイスにおけるGrover Mixier QAOAのフェアサンプリングの現状について調査します。

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D-Waveマシンの限界を超える”大関法”

現状のD-Waveマシンでは、ハードウェア上に解きたい問題のグラフを埋め込む必要があります。このグラフが密になればなるほど、使用できる量子ビット数は少なくなってしまいます。問題をQUBO形式で表現する際、制約を罰金項で記述することがよくあります。しかし、罰金項は2次項であるため必然的にグラフは密になってしまい、使用できる量子ビット数を少なくしてしまいます。本論文では、このようなD-Waveマシンを使用する際に生じてしまう制限を解消する方法を紹介します。

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量子モンテカルロ法で無人航空機の通信網を作成する

この論文では量子アニーリングをシミュレーションする手法である量子モンテカルロ法によって無人航空機(UAV)の無線通信網を作成するアルゴリズムを提案しました。実験の結果、量子モンテカルロ法によって作成した通信網はSAで作成した通信網よりもエネルギー消費量が低くなっていました。

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ランダム K-SAT の相転移とアルゴリズム

K-SAT は、いくつかの変数からなる論理式を充足するような真偽値の割当を求める組合せ最適化問題です。K-SATはNP完全問題であることが示されており、現在のところ、入力サイズに対して最悪多項式時間で解くアルゴリズムの存在は知られていません。K-SAT の難しさの原因を理解し、K-SAT を平均的に高速に解くヒューリスティックを開発するための研究が進められています。本論文では、統計力学、特にスピングラス理論の手法を用いて K-SAT を解析し、上の 2 つの問いに対する洞察を与えます。

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